“家庭に端末を持ち帰っても学校と同じ環境で使える”と言えたことは大きい
2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、日本全国の学校は休校措置がとられました。前代未聞の事態に、オンライン授業などのICT活用が求められましたが、多くの学校はICT環境の整備が不十分だったため、その対応には課題が残りました。一方で、この機会にICT環境整備や活用を大きく進めた学校もあります。
青山学院初等部もそのひとつです。同校は、コロナ禍の休校措置からわずか半年、2020年10月に3年生から6年生を対象に1人1台環境を導入。年度途中の異例のスタートとなりましたが、第2波、第3波のリスクに備え、学習に使う“文房具”として約500台の端末を配備しました。
「もちろん、このような思い切った決断ができた背景には、コロナ禍以前から取り組んできたICT活用の手応えがあります」と、青山学院初等部 情報主任の井村裕教諭はそのように語ります。同校では2018年から3~4年生を対象に、学校共用の端末で1人1台環境を段階的にスタート。ICTを活用した授業や、クラスの連絡を配信する学校ポータルサイトの運用などに取り組むとともに、フィルタリングに「i-FILTER@Cloud」を導入し、安心・安全に活用できる環境構築を進めてきました。
そんな同校で1人1台環境を本格実施する決め手になったのは、休校期間中に教員が在宅ワークを経験したことだったと井村教諭は振り返ります。
「校内では、1人1台に消極的な声も完全にゼロではありませんでした。そのような中で休校となり、教員も在宅ワークをすることになりました。『Microsoft Teams』などを活用してほとんどの仕事がオンラインでできることを教員が経験したことによって、“児童の学びにも使える”というイメージが広がりました。結果として、この経験が本校のICT活用を一気に進めたと思っています」(井村教諭)
とはいえ、年度途中に1人1台環境をスタートするのは、教員や保護者に戸惑いや不安がまったく無かったわけではありません。これについて井村教諭は
「コロナ禍以前の実証実験などから、『i-FILTER@Cloud』があれば安心・安全に端末を使えることが分かっていました。この実績をもとに自信を持って、“家庭に端末を持ち帰っても学校と同じ環境で使えます”、“児童に自由に使わせて大丈夫です”と言えたことは大きかったですね」と話してくれました。
どこにいても学校と同じ環境で使えて管理もしやすい「i-FILTER@Cloud」を選択
青山学院初等部がフィルタリングに「i-FILTER@Cloud」を選んだ理由は、1人1台環境の整備を進めるうえで、児童が家庭に端末を持ち帰って学習する使い方を重視していたからだといいます。 「これからの社会を生きていくために必要なICTスキルを身に付けるには、学校だけでの活用にとどまらず、家庭でも“文房具”として使いながら、活用することが大切だと考えていました。そのためには、どこにいても同じフィルタリングで端末を使える環境が望ましく、クラウドで管理できる『i-FILTER@Cloud』が最適でした」(井村教諭)
また井村教諭は、時間やグループごとに細かくフィルタリング環境を設定できるのが「i-FILTER@Cloud」のメリットだったといいます。
「端末を活用していると、たとえばYouTubeは学校全体で禁止していても、『体育の授業のときだけ見せたい』、『調べ学習の時はフィルタリング設定を緩和したい』といったリクエストも出てきます。そのようなケースも、『i-FILTER@Cloud』なら授業で扱いたいコンテンツを特定の学年だけに見せたり、時間帯によってフィルタリング設定を緩和したりといった設定ができます。学習のねらいに合わせて細かく設定できるので、教員が安心して授業に活用できる環境が作れています」と井村教諭は語ってくれました。
さらに、端末がフィルタリングから離脱できないよう設定できることも学校現場にありがたい機能だと井村教諭はいいます。
「『i-FILTER@Cloud』のフィルタリングを抜けるのはとても難しいので、きちんと学校として管理できる体制を築くことができます。これは学校としてとても重要だと考えています」
コロナ禍における新しい学びの形にもスピード感を持って対応できた
このような環境のもと、青山学院初等部はコロナ禍の休校期間中もICT活用を積極的に進めていきました。休校期間中はまだ1人1台環境が正式にスタートしていませんでしたが、学校共用の端末を適宜貸し出すなどして、オンライン学習に取り組んでいたといいます。
休校開始直後は、学校のポータルサイトを利用してPDFファイルのプリントを配信するところからスタート。次第に、プリントの補助教材として動画を利用し始めると、オンデマンドのオンライン学習を行うまでに取り組みが発展。教員によっては、授業のアンケートもオンラインで実施するなど、活用が広がっていったといいます。
「休校期間中は、多くの教員がいろいろなチャレンジに取り組んだ時期でもありました。初めの頃は教員がオンラインで課題を出したところ、フィルタリングで引っ掛かってしまって児童がアクセスできないというトラブルも発生したのですが、連絡をもらって『i-FILTER@Cloud』の設定を変更することですぐに解決できました。改めてクラウド版の良さを感じたとともに、スピード感を持って対応できることは、新しい学びの形にチャレンジしている教員にも安心して取り組んでもらえると思いました」と井村教諭はいいます。
同校では休校期間中も、保護者らがICTに関して技術的な問い合わせができるように専用窓口を作るなど、コミュニケーションも工夫しました。
また井村教諭は、「i-FILTER@Cloud」のおかげで家庭でのオンライン学習についても不安は無かったと休校期間中を振り返りました。学校から貸し出した端末については、朝5時から夜10時までしか使用できず、使えるWebサイトも制限。
「保護者の方の不安を取り除き、“子どもたちに端末を渡して大丈夫”と言い切ることができました。このように安心・安全な環境で使えるという認識が広がったことも、1人1台環境の導入につながったと思います」と井村教諭は語ってくれました。
学校で学んだ続きを家庭でも。“文房具”として当たり前に使える環境をめざして
井村教諭は改めてこれまでの取り組みを振り返り、
「インターネットを使う機会が予想以上に増えました。本校では辞書やタイピングソフトもクラウド版を使用するようになり、これも『i-FILTER@Cloud』を導入しているので安心してインターネットにつながった端末を使わせられるからだと思います」と学習方法の選択肢が広がったことを語ってくれました。
また、児童のICTスキルも非常に伸びていると井村教諭はいいます。
「本校はMicrosoft 365のアカウントを児童全員に配布しているのですが、それを活用して、調べ学習の内容をPowerPointにまとめたり、家で作った資料をOneDriveに保存して学校で続きを作成したり、また自主的にTeamsを使って調べた内容を教員に報告したりする児童も出てきていて、正直驚いています。クラウドでどこからでもアクセスしてコンピューターを使う感覚は、今の子どもたちにとって当たり前なのだと感じました」
一方で、まだ情報リテラシーが発達段階にある小学生のICT活用については、注意すべき点もあります。これについて井村教諭は
「ときには不適切な使い方をしてしまう児童もいますが、『i-FILTER@Cloud』では、すべてのログを確認することができます。そのログで監視するようなことはしませんが、児童には“ログを見れば誰がやったのかすべて分かるよ”と伝えています」と情報リテラシー教育の一助になりそうな可能性を語っています。
今後について、「学習のすべてをデジタルで行うことを強制するわけではなく、教科書なども紙とデジタルを自由に選べたり、学校で取り組んだ学習をクラウドに保存して家庭で続きをできるようにしたり、自然な形で使える場面を増やしていきたいです」と語る井村教諭。
今まで以上にICTを活用し、“文房具”として使うことが当たり前になる環境をめざすためには、児童もさまざまな使い方にチャレンジできる場面が必要です。井村教諭は、そのためにも「i-FILTER@Cloud」で築いた安心・安全な環境が欠かせないと話してくれました。